2013年12月19日木曜日

レビュー|「真鍋恵美子展―Together―」

展覧会名|「真鍋恵美子展―Together―」
会期|2011524日(水)~68日(木) 
会場| ATELIERK


執筆者|宮田 徹也


fig.1 真鍋恵美子展 展示風景

横浜を拠点とする真鍋恵美子の横浜における展覧会である。新人という年齢ではないし、中堅にしては作品の強度があり、ベテランと定義されるほど落ち着いてはいない。真鍋は果敢に作品を制作し、世論に対しても明確な意見を持っている。その評価は既に確立してはいるのだが、真鍋はそういったイメージを展覧会ごとに次々と破壊していく。

この展覧会ではそれまで得意としていたコラージュと多彩な顔料を極端に減らし、主に白と黒の世界の形成を図った。白と黒と云っても和紙に墨であり、時折アクリルを使用しているのだから、もしかしたらこの作品群のほうがそれまでの作品よりも、煌びやかに発光していたのかも知れない。

fig.2 真鍋恵美子展 展示風景 撮影:宮田徹也

真鍋は18×23cmの作品を26点、32.5×40cmの作品を15点、21×43cmの作品を1点、50×70cmの作品を2点、合計44点を出品した。素材は和紙に墨、アクリルだが、大型の作品はケント紙である。「Red」「Gold」などの象徴的で簡潔なタイトルがヴァリエーションし、制作年は総て2011年である。

和紙に墨を流しただけの作品は、簡素でありながらも真鍋でなければ出来ないスタイルと成っている。書やアメリカ抽象絵画、日本画の抽象性と一線を画している理由は、やはりモチーフであり方法論であり意識の違いであろう。真鍋は多様なスタイルを通過した上でこの技法に至った。これまでの自己の中に根付いた制作が導き出された結果ということができよう。

fig.3 真鍋恵美子展 展示風景 撮影:宮田徹也

 真鍋の最も素晴らしい点は、全くの独学の点にある。独学だからできることではなく、独学でなければ出来ないことに画面は満ちている。墨を少なく使用する作品と、多く盛り込む作品が、全く異なって見える。これは一様に墨の使い方を学ぶ作家には不可能な技法である。真鍋は自己の思いをストレートに技法に転じられる、稀有な作家であると言うことが出来る。

fig.4 真鍋恵美子展 展示風景 撮影:宮田徹也

それでもこれまで培ってきた手法を捨てることがない点にも、真鍋の魅力は発揮されている。画面を矩形で区切り、その中に描かれるモチーフは孤立せずに全体に繋がっている。その視点は水平と垂直を通り越して、俯瞰と蛙瞰にまでも達しているのだ。作品は壁に架けられているのだけれど、壁を突き抜けていくのではなく、見る者の視線が床から天井からと変容するのだ。

fig.5 真鍋恵美子展 展示風景 撮影:宮田徹也

真鍋のように自由に自己の思いを作品に投影出切る作家がもっと増えてくれればいいと思う。44点の作品を展示したATELIERKは決して広い空間ではない。しかし、底知れぬ広さを感じてしまうのは、やはりATELIERKという画廊の意識の高さに他ならない。ATELIERKは旺盛に活動を繰り広げているのだから、今後も横浜に注目していきたい。

0 件のコメント: