展覧会名|母袋俊也展「Qf・SHOH《掌》90・Holz 現出の場-浮かぶ像-膜状性」
会期|2011年6月13日(月)~25日(土)
会場|ギャラリーなつか
会場|ギャラリーなつか
母袋俊也は「絵画とは何か」をこれまでも、これからも考え続ける。その中間報告を『母袋俊也 絵画 マトリックス 1987-2010 M1-M431』(東京造形大学[研究報]/2011)としてまとめた。この展覧会を、また新たな母袋の始まりと定義付けることが出来る。しかし、3.11が起きた。母袋が会期中に配布した「〈Qf-SHOH 《掌》 90・Holz現出の場―浮ぶ像―膜状性〉展に寄せて」を、引用する。
「3カ月が過ぎた。/(中略・引用者)僕は何の躊躇もなく受け入れた9.11とは異なり、3月11日を3.11とは呼べないでいる。/その日以来、その日を契機にそれぞれの専門性は、厳しくその根本と胆力を問われている。そんな中、圧倒的な現実を前に、聖顔布を起源の一つとする絵画もまたその使命が問われている。/そもそも、その絵画は観者にとってどのようなものとして対象化され、どこに現れているものなのだろうか。/今展では画廊内に黒く塗装された仮設壁を設営、僕が絵画の特質と考える“膜状性”とその“像”、そしてその“現出する場”の現前化を試みます。(以下略・引用者)」
3.11が一つの機運となった展覧会であり、芸術の根底が問われる中で、母袋の仕事の可能性が問われていることを、母袋は自ら問う。仮設壁に展示=浮んでいる作品は《M432 Qf-SHOH 《掌》 90・Holz
1》であり、通路となる壁面にはこの作品のプランドローイング《 plandrawing・draft》が展示されている。入って右側の通路の奥には《Quadrafull《掌》24 WC-1》が、奥のオフィスには《Quadrafull《掌》20 WC-1》、《Quadrafull 25 WC-13》、《Quadrafull 25 WC-14》、《Quadrafull 25 WC-17》が展示されている。《Quadrafull》シリーズは5点ともシートである。ここでは特に、浮ぶインスタレーションについて言及する。
fig.2 母袋俊也展 展示風景 提供:ギャラリーなつか 撮影:末正真礼生
母袋は自己のアトリエで画廊の見取り図を元に黒い部屋を作成したと言う。いつものなつかとは全く異なる空間に驚愕した。黒い部屋の入口に立つと、《M432 Qf・SHOH《掌》90・Holz1》が正に浮んで見える。この部屋の外側左側面には穴が開いており、そこから作品を垣間見ることも可能だ。しかしM・デュシャンの《遺作》と決定的に異なる点は、この穴は一つであることだけではなく、正面から見た後にここから見ることによって、母袋の意図が強調される、謂わば補足的役割を持っている点にある。
普段私達は何気なく絵画に接しているが、実は複雑な工程を経て、様々なことを考慮に入れながら作品と向き合っている。その過程を顕わにするのが、今回のインスタレーションの役割であると言えるだろう。DMに記されている情報がそれを物語っている。絵画とは実体が存在するリアルな現実世界と、精神であり虚でもあるもう一つの世界との間に位置する。我々の視線はもう一つの世界からやってくる光を捕獲する。その光とは、実はもう一つの世界からの視線なのだ。そこには重力も深く関与する。
fig.4 母袋俊也展 DM
それは、《M432 Qf・SHOH《掌》90・Holz1》そのものの構造にも秘められている。《M432 Qf・SHOH《掌》90・Holz1》は単なる聖母像ではない。西洋の聖母像を司る根底の形を問い、東洋の印相から溢れる光の意義を問い、これまでの宗教が培ってきた色彩の謎を解こうとしている。《M432 Qf・SHOH《掌》90・Holz1》は、やはりこのインスタレーションの中で見なければその真意が伝わりにくい。しかしそれは作品を前に雑念が生じていることでもある。絵画における空間の内在はこれまでも行ってきたのであろうが、それがまた母袋のこれからの追究の場でもあるのではないだろうか。
母袋俊也:ギャラリーなつか-銀座:http://homepage2.nifty.com/gallery-natsuka/natsuka/artist%20contents/motai_toshiya/motai_toshiya11.html
母袋俊也:ギャラリーなつか-銀座:http://homepage2.nifty.com/gallery-natsuka/natsuka/artist%20contents/motai_toshiya/motai_toshiya11.html
【展覧会】「母袋俊也 Qf・SHOH《掌》90・ Holz 現出の場-浮かぶ像-膜状性」 展 : 母袋俊也 Official Web Site / News:http://tmotai.exblog.jp/15676183/
母袋俊也/Toshiya Motai/Official Website:http://www.toshiya-motai.com/
0 件のコメント:
コメントを投稿