2013年12月20日金曜日

レビュー|「加藤義郎展/ねじる」

展覧会名|「加藤義郎展/ねじる」
会期|2011523日(月)~28日(土) 
会場|ギャラリーGK


執筆者|宮田 徹也


fig.1 加藤義郎展 展示風景 提供:加藤義郎

加藤義郎は1939年横浜生まれ、独学で現代美術に到達し、1968年に村松画廊、翌年からは伝説のサトウ画廊で個展を繰り返したツワモノだ。タブローから水を用いた概念化され得ない芸術を追究、90年代から鍋、ヤカン、フライパンなどを平たくなるまで叩き潰す作品を発表してきた。スカイタワーを叩き潰して欲しいと要望したところ、極近年からこの個展のように木を捻るという恐るべき手法を獲得したと返事を戴いた。加藤はビデオ作品も制作している。詳細はWebで。(http://www5c.biglobe.ne.jp/~kanazuch/

当然、木が捻られたように削られているのではあるが、本当に捻ったのではないかと驚愕するほどのクオリティを作品は保っている。この作品群は「驚愕すること」に意義がある。加藤は単に人を驚かそうとするイミテーションアートや掘り起こせばオプティカルアート、シュミレーションアートとは無縁である。木を捻る、出来そうで出来ない、概念化されそうになっても概念化され得ない境界線を辿っていることを考慮に入れれば、加藤の略歴は一貫することとなる。

fig.2 加藤義郎展 展示風景 提供:加藤義郎

しかしその中にも加藤はユーモアと気軽さを忘れない。堅苦しく難解な現代美術の「思想」を提示するのではなく、見る者が「驚愕」「すること」という二つの行為へ導いてくれるのだ。自己の作品に他者の視線を携えることによって作品を完結させるという現代美術の当たり前の手法をさらりとやってのける点に、加藤のベテランとしての存在感が浮び上がる。単に「これはどうなっているのだろう」と見る者が考えるだけで、加藤の主張は伝達が完了するのだ。

fig.3 加藤義郎《折り畳めない四曲屏風》 提供:加藤義郎

当然、加藤は驚愕をさせるだけではなく、造型作家としての工夫も凝らしている。《折り畳めない四曲屏風》を見るとエッジまで鋭く磨き上げている。捻る、といっても単にフォルムを形成するのではなく、幾何学的計算を元に制作している。そうでなければ、捻ることは成立しない。また、捻るという行為は絞る、締めると同様、非常に力が必要であるという印象を与える。その捻る行為を、木が持つ温かさや柔らかさに転換するのがこの作品の特徴ともなる。金属や石を捻っても面白くもないのだ。

fig.4 加藤義郎《15°ひねり2題》 提供:加藤義郎

fig.5 加藤義郎《30°ひねり2題》 提供:加藤義郎

かといって加藤は彫刻家ではない。加藤は飽くまで、現代美術を追及している。この頃の加藤の作品には、削り落ちた木片や木屑を装飾的に展示していたが、この原稿を書いている2013年になると、その木片や木屑を用いて作品を制作する姿が目撃されている。そこにはエコロジーというメッセージよりも、生きることに無駄は存在しないという加藤の信念すらも感じることが出来る。詳細については、今後の「批評の庭」を引き続き読んでいただくとそのうち登場する予定である。

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