2012年6月10日日曜日

drawer|松川はり MATSUKAWA hali

素材:ペン、色鉛筆、紙、トレーシングペーパー
サイズ:29.7×42cm
制作年月:2007年〜2011年(2012年6月に再構成

drawerについて:
思考の痕跡である様々な〈らくがき〉の中から、
1、人に見せるつもりもなく描いたもの
2、直接的な思考が見える文字があるもの
3、おそらく私の特色と思われている色彩が入ったもの
ということで4点を選びました。
2点がエスキース、右上がスケッチ、右下は本当にただの落書き・・・。
鉛筆で描いているのは表面から、ペンで塗っているものは裏面から描いています。
裏彩色は絹本の透ける特徴を利用した日本画の伝統的な技法で、私が本画作品でも紙のらくがきでもよく使う技法です。
右下の文字にも「裏描・すかし・透」とメモしています。


Artist|松川はり MATSUKAWA Hali

1979       大阪府生まれ
2001-2005 武蔵野美術大学 造形学部日本画学科
2005-2007 武蔵野美術大学 日本画研究室 教務補助員
2008-2009 武蔵野美術大学 コンテンツ開発室『造形ファイル』制作スタッフ

【個展】
2004 小野画廊Ⅱ/銀座
2005/2007 GALLERY b.TOKYO/東京
2008 パラフィン(イベント 哲学カフェ『ミルトーク』) A.K Labo/吉祥寺

【グループ展】
2005 選選展‐五美大卒業制作展より O gallery/銀座
2006 SAA‐武蔵野美術大学教務補助員展 part2 武蔵野美術大学 美術資料図書館
2007 PresentationExhibition ARTCOURT Gallery /大阪
    5歩展 GK Gallery /銀座
2009 Gallery Selection GALLERY b.TOKYO/東京
時々jiji TURNER GALLERY /東京
2011  Emerging Contemporary Artists of Japan 2011 2/20 Gallery / ニューヨーク
   Art On the Pearl Initiate Pearl/東京
αMプロジェクト2011  成層圏 volume 04‐「私」のゆくえ αM Gallery /東京
    Emerging Contemporary Artists of Japan 2011 2/20 Gallery / ニューヨーク
   Onward Navigating the Japanese Future 2011 Hive Gallery/ロサンゼルス
2012 PIECES 銀座ギャラリーあづま/東京

【アートフェア】
2010 Art Taipei 2010 /台北 台湾
2011/2012 SOAF 2011 COEX /ソウル 韓国
1012 VERGE NYC /ニューヨーク

【掲載】
2009 月刊美術手帖2月号 『Go! Artist Go! Vol.36
2011 Repli Vol.02『ミルトーク‐対話から生まれるまなざしへの問い』
2012 東京グラフィティ #091『お小遣いで買える!次世代アート260!!』

【受賞】
2003 第3回 佐藤太清賞公募美術展 日本画の部入選
2005 武蔵野美術大学 造形学部日本画学科 卒業制作優秀賞
2012 第5回アーティクル賞 審査員特別賞 立嶋惠賞


松川はり《拡張する 1》絹、水干、岩絵具、箔、ペン、土佐麻紙 91.0×72.7cm 2007


松川はり《Aqua?mirror?-noon》テトロン、水干、岩絵具、ペン、土佐麻紙 227.3×181.8cm 2011 撮影:加藤 




drawer|多田さやか TADA Sayaka

素材:ラシャ紙、コピー用紙、トレーシングペーパー、ペン、ステッカー
サイズ:29.2×21.2cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
 私は、日本画の定義について画家たちが論議することを疑問に思う。そもそもジャンルなんてものは絵を説明するのに便利な言葉にすぎない。現在「日本画」において使用される画材も技法も、国境を越えたところから伝えられ、小さな島国で受け継がれてきたものである。時代の移り変わりとともに描かれるものも変化していったが、その継承を断つことなく「日本画」は進化を続けている。もし本当に「日本画」の存続が危ういのだとしたら、現代の日本には描き手とその作品が溢れすぎているのだろう。説明に頼るのではなく、後世へまた何かを伝えていくことのできる絵を描くことが、「日本画」を継承していくために最も重要な手段であると考える。


Artist|多田さやか TADA Sayaka

1986 山形県に生まれる
2012 東北芸術工科大学 芸術学部 日本画コース 在籍

【個展】
2009 VESPA(TRIO、山形)
2010 低空飛行(空屋、神奈川)
2012 春と修羅(新宿眼科画廊、東京)

【グループ展】
2010- 東北画は可能か?(アートスペース羅針盤/東京、art room enoma/仙台、imura art gallery/東京、会津 漆の芸術祭/福島)
2010 SF(山形まなび館 MONO SCHOOL/山形)
2011 O−—(高円寺AMP café/東京)
2012 東北画は可能か?(neutron tokyo/東京)選抜メンバー
2012 シカク展(art room Enoma/宮城)

【ワークショップスタッフ】
2009 三瀬夏之介「肘折山水を描く」(肘折温泉つたや金兵衛/山形)
2010 犬飼とも「エコアソビノココロ」(山形まなび館 MONO SCHOOL/山形)


Web


Works
多田さやか《Pangaera》パネル、コラージュ、アクリル、金箔 1940×1940mm 2012年

多田さやか《Riesenrad》パネル、アクリル、墨、ペン、コラージュ 1455×1120mm 2011年




drawer|木村浩之 KIMURA Hiroyuki


素材:データ
サイズ:29.7×42cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
私の制作の基本は日日の取材でのスケッチと、自ら体験する稽古にあるので、drawerでお見せできるのは
その一部になります。私の作品をつくる時の感覚では、見たものや思った事がすぐ形になるのではなく、
5,10年という時間をかけて体にしみ込むようにして出来ていくと思います。
自分のなかに時間をかけて蓄積したものが、熟成していくような感覚です。
また私の考えでは、日本画は日本美術の一部として捉えているので、絵画の表面だけでなく、今までの
日本人が創ってきた文化を捉え、その中に身をおきたいと思っています。


Artist|木村浩之 KIMURA Hiroyuki

1975 東京生まれ
2003 多摩美術大学日本画専攻卒業

【個展】
2003・04  アートギャラリー環
2005 アートスペース羅針盤
2007 -発気揚々-」(トキアートスペース)
2008 Gallery jin
2009・11 柴田悦子画廊
2009 Galerie Hexagone、ドイツ、アーヘン市
2011   羽黒洞
2012 阿曾美術

【アートプロジェクト】
2012  春色の墨(パークホテル東京)

【アートフェア】
2011 Varia(名古屋松坂屋)


Web


Works
木村浩之《大露羅》紙本着彩 白亜、岩絵の具、墨、雲母 F8号 2011年 

木村浩之 相撲人形 テラコッタ、彩色 2011年 サイズ高さ10cm程度




drawer|加藤優花 KATO Yuka


素材:和紙、鉛筆、クレヨン、水干絵の具
サイズ:38.5×56cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
私たちは、ある大きなリズムのなかにいた。

ここに在るのは実体ではなく、流れが作り出した「効果」として見えているだけの“何か”。私にとって本当に問題なのは、“何か”と作品との関係で、自分と人々をむすぶ作品を私自身の『生』のためにもとめてゆくのです。
唯一のつながりの途として作品をさがしているのです。
そして、さまざまに形をかえつつ、生々流転を続け、かたちとして再会した現象を愛しはじめています。
それらに付随した意味や理由までも、細かい光や砂のように、こわしてすぐに再生する
もっと深いところで関わり合うために


Artist|加藤優花 KATO Yuka
drawer

Artist|加藤優花 KATO Yuka

1986 神奈川県生まれ
2008 多摩美術大学日本画専攻卒業

[個展]
2008 アートスペース羅針盤、東京
2010 ギャラリー広田美術、東京 

[グループ展]
2005 二人展(ギャラリーフォレスト、東京)
2009 「FIELD OF NOW 2009」(銀座洋協ホール、東京)
    「FUTABA FRESH ARTIST'S」(フタバ画廊、東京) 
2012 「阿吽」(アキバタマビ21、東京)
          
[受賞]
2007 守谷育英会修学奨励金 守谷賞

Works

加藤優花《(私は私に)かえりたい》岩絵の具、水干絵の具、墨汁、染料、ガラスビーズ 140㎝×190㎝ 2011年


加藤優花《やさしく、壊してあげよう》岩絵の具、水干絵の具、墨汁、染料、ガラスビーズ 115×92㎝ 2011


drawer|西川芳孝 NISHIKAWA Yoshitaka


素材:画用紙、ペン、水彩絵の具、墨
サイズ:29.7×42cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
日本画について考え出すと、どうしても日本人について考え出す。日本人を考え出すと西洋人や日本人以外の東洋人を比較として考え出す。
素材を考え出すとなぜその素材を使うのかという、使い手つまり結局は「人間」を考える。
全て人間論だ。
頭の中が余計なもので溢れている今の僕のドロワーはグチャグチャしてて醜い。それはまんま僕の人間性がグチャグチャしているからだ。
一つの物事を深く強く探求し続けた先人達が到達している無駄が省かれた美を僕も知りたい。
僕の中のドロワーが、いつかストンとした無駄のないものになるのを信じて絵を描く事しか、今は出来ない。


Artist|西川芳孝 NISHIKAWA Yoshitaka

1979 東京生まれ
2003 多摩美術大学日本画専攻卒業
2005 堀越泰次郎記念奨学基金 第4回奨学生授与

【個展】
2005・06・07・10 アートスペース羅針盤、東京
2007・09 ガレリア青猫、東京
2010 数寄和、東京・滋賀

【グループ展】
2007 青黒い平面」(ギャラリー・しらみず美術)
2008 「損保ジャパン選抜奨励展」
    「山梨県・葡萄剪定利用木炭画展」
   「墨の力」(羽黒洞、東京)
2009 「掛け軸の可能性」(羽黒洞、東京)
   「共振」(国立・コートギャラリー)
2010 「ガロン 第1回展」(瑞聖寺ZAPギャラリー、東京)
2011 「現代水墨作家展」(国立新美術館1

【受賞】
2005 トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展入選


【コレクション】
福知山市佐藤太清記念美術館


Works
西川芳孝《鳥》和紙(新鳥の子紙)、墨、墨汁、胡粉、膠 270×2,500cm 2010年

西川芳孝《蓮庭》和紙、顔料、岩絵の具、墨、墨汁、膠 F150号 2011年



drawer|忠田 愛 CHUDA Ai


素材:クラフト紙、鉛筆、ダーマトグラフ、ソフトパステル
サイズ:42×30cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
私自身は普段、自分の絵を日本画だと限定して認識している訳ではなく、ただ「絵」で、
見る方の自由でよいと思っています。
ただ、自分のなかにある日本とは何なのか、自分が立つ土や、
自分をたどる時に鍵となってくるものが日本とどのような関わりをもっているのか、
そもそも日本とは何なのか、
そんな疑問は日本画を出自として常々抱くようになり、大きな要素として考えつづけています。
つまり、私にとっては「日本画」とは直接考えることで近づけるものではなく、
自分のなかをたどっていき、絵の周囲を外側から埋めていくことで浮かび上がってくる何らかのもの、
という認識でもあります。


Artist|忠田 愛 CHUDA Ai
drawer

Artist|忠田 愛 CHUDA Ai

1981   大阪府生まれ
2000 同志社大学文学部文化学科美学及び芸術学専攻中退
2007 京都造形芸術大学大学院芸術研究科芸術表現専攻修士課程修了

【個展】
2006   ギャラリー風、大阪
2008・’09・’10・’11 ギャラリー歩歩琳堂、神戸(’10は銅版画展)
2008 neutron kyoto、京都
2010 neutron tokyo、東京
2010   新生堂、東京
2011   atelier matisse、熊本(銅版画展)

【グループ展】
2003 「二人展(稲富淳輔・忠田愛)」(ギャラリーマロニエ、京都)
2005 「第3回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展」(豊橋美術館、愛知)
2006 Xhibition#03」(ギャラリーRAKU、京都)
     「国際芸術展」(韓国現代美術館・弘益大学、韓国)
2007 「国際公募墨画トリエンナーレ富山2007」(富山県水墨美術館、富山)
     「混沌から躍り出る星たち展」(スパイラルガーデン、東京)
      「第11回公募新生展」(新生堂、東京)
            「造形大日本画研究室選抜 画心展」(府立文化芸術会館、京都、’08洋協ホール、東京、’09アートスペース羅針盤、東京)
2008 「羅針盤セレクションvol.4様々な日本画六人展」(アートスペース羅針盤、東京)
            「ふりつもる線/言葉 Live drawing(忠田愛)+Poetry reading(高橋利哉)」(ギャラリージャック&豆の木、鎌倉)
2009  GASOLINE(千光士誠・忠田愛)」(ギャラリーwks、大阪)
     「京都アートフェア」(みやこめっせ、京都’10,11
     「神戸アートマルシェ(neutronブース)」(クラウンプラザ神戸、兵庫)
     「冬の企画展”its a small world”」(neutron Kyoto、京都)
2010 「京都日本画新展」(ISETAN、京都’11
2011 「第56CWAJ Print Show
            ART OSAKA2011neutronブース)」(グランヴィア大阪、大阪)
    「OPEN FACTORY」(neutron kyotoFACTORY”、京都)
            「夏の特別企画展”来るべき世界”」(neutron tokyo、東京)
     「第5回山本鼎版画大賞展」
     「十一の海」(日本経済新聞社SPACE NIO、東京)
2012 「~うつくしきもの~ ミニアチュールの魅力展」(ISETAN、大阪)
     「日本画家のオブジェ展」(ギャラリーマロニエ、京都)
     「パンドラを覗くアートシェルフの出会い」(蔵丘洞画廊、京都)

【ワークショップ】
2011 「きっずみゅーじあむ2011」にて”身のまわりの土で絵具を作って描く等身大自画像”
   (佐川美術館、滋賀)

【受賞】
2007 「第11回公募新生展」・新生賞
2011 「第2回京都日本画新展」・優秀賞
2012  平和堂財団新進芸術家奨励賞


Web


Works
忠田愛《Lament》麻布、陶土、岩絵具、土性顔料、墨、鉛筆 65.2x50cm 2011年 

忠田愛《わたの原杉板、岩絵具、土性顔料、墨、陶石 130x324cm 2011年







drawer|菅原有生 SUGAWARA Yuu



素材:トレーシングペーパー、画用紙、木、和紙、携帯ノート、印刷用紙、色鉛筆、ボールペン
サイズ:29.7×42.0cm
制作年月:2010年10月〜2012年5月

drawerについて:
ここに載せているものは、
イメージのチリのようなものから、チリを少し寄せ集めて塊になりかけているものがあります。
これはある作品に使用したチリ山の一角ですが、
思考の方面をまんべんなく選んでみました。

・木の枝に和紙:
枝に濡れた和紙を貼って生まれた線と枝の線との共演が面白く感じられました。

・トレペに根のスケッチを重ねたもの:
主従、優劣はつけないように心がけました。

・携帯ノート、切れ端メモ、写真:
よく人から、あとで自分で理解できるの?と聞かれます。
だいたいは、そのワード、ヴィジョンから記憶を引っ張りだせますが、
自分でも誤って記憶を作ってしまうこともあります。そうした偶然も面白いです。


Artist|菅原有生 SUGAWARA Yuu
drawer

Artist|菅原有生 SUGAWARA Yuu

2007 武蔵野美術大学日本画学科入学
2010 三菱商事アート・ゲート・プログラム奨学生
2011 武蔵野美術大学日本画学科卒業

【展示歴】
2010 「越後妻有・大地の祭り2010夏 線描の悦び―素描と日本画の作品を中心として―」(大地の芸術祭の里
2010 「線描再考-Reconsider Drawing-」(MAKII MASARU FINE ARTS
2010 「三菱商事アート・ゲート・プログラム」EYE OF GYRE*オークション:三菱商事ビル
2011 「第2回油-日 yu-bi」展 GALLERY SHOREWOOD
2012 「Emerging Contemporary Artist of Japan 2012」展(2/20 Gallery,New York

【受賞】
2010 第46回神奈川県美術展 平面・立体部門 大賞受賞
2011 アートアワードトウキョウ2011 佐藤直樹賞受賞


Web


Works
菅原有生《くさはら》麻紙、岩黒、胡粉 1120㎜×3240 2009年 

菅原有生《地中の原》麻紙、胡粉、岩絵の具 1350㎜×5400㎜ 2011






2012年6月8日金曜日

drawer|市川裕司 ICHIKAWA Yuji



素材:コピー用紙、鉛筆、アルミ箔
サイズ:29.7×41.0cm
制作年月:2012年5月

drawerについて:
記したものは、振り返った短い過去にすぎません。でも作品の裏側にあるこの短いプロセスが制作の大事な現場なのだと思います。


Artist|市川裕司 ICHIKAWA Yuji
drawer

Artist|市川裕司 ICHIKAWA Yuji


1979 埼玉県生まれ
2005 多摩美術大学大学院日本画領域修了

 [個展]
2005 Gallery b. Tokyo、東京
     ウインドーギャラリー (ウエマツ画材店、東京)
200607081011 コバヤシ画廊、東京
2009 ギャラリー渓、東京
2012 カフェ&ギャラリー山猫軒、埼玉

[グループ展]
2005 「第13回奨学生美術展」(佐藤美術館、東京)
2006 real point(佐藤美術館、東京)
2007 「中之条ビエンナーレ」(廣盛酒造、群馬)
2008 「第27回損保ジャパン美術財団選抜奨励展」(損保ジャパン東郷青児美術館、東京)
2009 「画廊からの発言 新世代への視点 2009年」(コバヤシ画廊、東京)
       「新収蔵の20人」(佐久市近代美術館、長野)
2010 META Ⅱ」(神奈川県民ホールギャラリー 、神奈川)
     「第16回 尖」(京都市美術館、京都)
     「第1回 こめつぶつぶより」(山猫軒、埼玉)
       「ガロン 第1回展」(瑞聖寺ZAPギャラリー、東京)
       META Ⅹ」(日本橋高島屋 美術画廊Ⅹ、東京)
2011 New Vision Saitama 4 静観するイメージ」(埼玉県立近代美術館、埼玉)
     「act」(アキバタマビ21、東京)
         「第2回 こめつぶつぶより」(山猫軒、埼玉)
     「META2011(日本橋高島屋 美術画廊Ⅹ、東京)
       「土方朋子×市川裕司」(銀座ギャラリー女子美、東京)
         META2011(神奈川県民ホールギャラリー 、神奈川)
2012 「ガロン 第2回展 日本背景」(旧田中家住宅、埼玉)
         「第5回日経日本画大賞展」(上野の森美術館、東京)

[受賞]
2012  五島記念文化賞 美術新人賞



Web site




Works
市川裕司《螺旋体》方解末、ジェッソ、アルミ箔、墨、典具帖紙、樹脂膠、ポリカーボネート、スチール 384×1456 cm 2011年 「New Vision Saitama 4」(埼玉県立近代美術館、2011年) 撮影:島村美紀


市川裕司《amorphous》方解末、ジェッソ、典具貼紙、墨、樹脂膠、スチール、アクリル板 401.6 × 401.6 cm 2009年 個展(コバヤシ画廊、2009年) 撮影:末正真礼生

2012年6月6日水曜日

イマジン|往復書簡:「イマジン」のはじまりとこれから(後編)

第5信|小金沢智→市川裕司
2012/05/28 1:15

 出張先は盛岡でした。職場の世田谷美術館に巡回する展覧会で、副担当をしている「生誕100年 松本介展」@岩手県立美術館(2012414日~527日)を見るためでしたが、松本介(19121948)という人は、非常に勉強をしていた人なのですね。その蔵書を昨年末に調査する機会があり、見せていただくと、古今東西の美術関係の書籍はもちろんのこと、文学、思想、哲学、歴史、宗教、物理学、等々、実に様々なジャンルの本を所蔵されていた。作品を形作るのは書籍だけではもちろんないのですが、介であれば、いわゆる「洋画」の範疇だけで物事を考えていたのではない、つまり多種多様なものが血肉になって作品を作っていた、ということを伺える調査でした。幼少期から青年期を過ごした盛岡という土地の風土も、ただ作家に留まらない、松本介という人間を形作るのに大きく関係したことでしょう。しかし、これは特別なことではなくて、僕たちは実に多くの要因によって今の自分がいるなと、改めて実感しました。

 さて、美術にはルールがある、という話になりそうですね。にもかかわらず、「日本画」は定義が曖昧であり、しかし、「ざっくりとしたある範疇にある」というのはなかなか複雑な話ですが、「日本画」に関係する人たちには、理解してもらえるところでしょうか。
 ここで話を若干ずらしますが、僕の話を少しさせてもらいたいと思います。僕は大学と大学院で日本美術史を学んだのですが、それは必ずしも「日本画」にかぎった話ではありません。このイマジンであったり、僕も市川さんもメンバーの一人のガロンであったり、縁あって、「日本画」に関係する人たちと一緒に仕事をする機会が多いのですが、卒論は河鍋暁斎(18311889)、修論は岡本太郎(19111996)でした。河鍋暁斎は「日本画」発生以前の幕末から明治の人だから「日本画」と言うには違和感があるし、岡本太郎は言うまでもなく洋画の作家です。これは美術史に携わる人間として非常に危険なことであると自覚はしているのですが、僕自身はわりとそういう「ジャンル」とか「ルール」とは無関係に作品を見たいという欲求があるんですね。"縛り"は必要だ、っていう発言と矛盾しますが、それはあくまで個々の作家が作品を作る段階での問題なので、結果としてできあがった作品は別である、と考えてしまう。現代の作家の評論を書くときも、だから歴史的にどうのこうのとか、あんまり書けないんですよ。理由は、「歴史」は他者に作られたものであって、それを語る人間によって姿を変えるから。責任を持って発言するには、大きな「歴史」ではなくて小さな「自分」を起点にするしかないんですね。たとえば松本介の作品でも、僕は「洋画」としてどうか、という風にはなかなか見られない。日本の油絵として、マチエールの格別美しい作品であるというのは承知の上で、それではないところで見ているという感覚がある。研究者としては甘い発言かなと思いますが、絵を見るって、最終的にはそういうことじゃないのかなと思うんですね。分析を超えたところにある。

 それで、イマジンのdrawerについても、これも人によって表出されるものが違うと思いますが、それで「日本画」の輪郭がということは、僕自身あんまり考えていません。って言うと問題があるのかな(笑)。そもそものお題として「日本画」があるわけではありますが、あくまでそれはきっかけでありたい。最終的に「日本画」の輪郭が出るかもしれないし、出ないかもしれない。けれども、これをきっかけとして、作家の思考に触れたいという気持ちがある。いい作家を知りたいし、いい作品を知りたい。
 こうしてやりとりをしているとつくづく感じますが、僕はリアクションで、市川さんはアクションなんです。これは批評や研究が前者であって、作品が後者である、ということと言い換えられると思いますが、僕は作品を作る側ではないし、できることは、いい作品に対して、今風に言えば、「いいね!」と言うことでしかない。僕はその「いいね!」の範疇の強度をどれだけ上げることができているかという点で、その真価が問われるんだと思う。あるいは、そういった作品が展開するきっかけを、言葉によって投げかけられるかどうか。
僕は、こういう言い方はつくづくどうかなと思いますが、いい作品が見たいだけなんですよ。そのために動いているから、イマジンも「日本画」を起点にしているけれど、特定のイデオロギーを持つ団体ではなくて、色々な人が集まって、色んな考えがある、そこから色んなものが生まれるような集まりにできたら理想だと思う。だから、厳密な意味でグループというのとは違うんですよね。市川さんは、その辺の意識として今後イマジンをどう考えていますか?まだ始まったばかりですけど。


第6信|市川裕司→小金沢智
2012/05/30 11:57

 いつも返答遅れてしまい申し訳ない。文章って難しいですね、いかに普段雑な言葉使いなのか思い知らされます。いまさらですが、文面がいろいろと酷いのはご了承ください。

 当然なのかもしれませんが、松本竣介にとっての盛岡のように育った土地環境や時代性なんかも作品に大きく影響してくるのでしょうね。いまは特に時代の回転が速いし、同じ小中学校出身でも3年も違えば話が噛み合ないことがよくあります。逆に出身が違えど同世代は共通の話題で盛り上がれちゃったり、情報化社会では良くも悪くも土地が少し味気なくなだらかになってきている気もします。

 時代の縦軸でみるというところですが、僕も自身のことで言えば、とにかくすごいって作品をつくることだけが最大の目的ではあります。画廊や美術館、公共施設、空間や企画によって制作の動機も変わり、そこから新しい構想やそれまでの自分になかった作品が生まれたり、様々な見聞から発想して自分の手で具現してみたくなる。やってることは単純につくることの楽しさを満喫、追求してゆく行為なのだと思います。その都度さまざまな制約や目的が少しずつ絡んできたりしますが、専ら最近は不自由さよりもルールとの葛藤に熱中しちゃいますね。そこに寄せるなら小金沢くんの気持ちもよくわかります。今回は個にスポットを当てていくわけだし、前提に大系的な狙いがあるわけじゃないですから。変な靴履いて歩き回られるより、あくまでも小金沢くんのアイデンティティを追求するのが正しいと思います。でもそうなるとリアクション側にも様々の視点が入ってくるとおもしろくなるかも知れませんね、多様な価値を拾い上げるという意味でも必要になってくるかと思いますが、いかがでしょう。

 今後ですか、正直「今」しか語れませんけど。
 実はイマジンの動機には裏があって、広い意味をもってやっていくために、立ち上げ文には敢えて盛り込んでいません。しかしながらそれが今僕が思う指針の軸なのだと思います。これはきっと自分が美大生や若手の作家に触れる機会がよくあることにも因るのですが、世代の移りとともに「日本画」が狭い、古い、面白くない、わからないといった声が次第に高まっているように感じ、そこには表現手段としての「日本画」への不信や失望、そして嫌悪や否定へと変わる現状もみられます。もちろん制作思考の転位とともに脱却したり、別の選択へ移るのは当然なことではありますが、背を向けずともやれることがあるんじゃないかなって。だから彼らよりちょっと先にいる作家の、制作のうちにある個人レベルでみた「日本画」の多様な認識から生まれた活路を、これから「日本画」に片足をつっこんでいく若い作家たちに見てもらいたいと思ったのです。だから作家から出てきたdrawerで帰結するのではなく、それを見たひとたちがどう思うのか、という所から始まる企画だとも思っています。その点でもイマジンは縦割りに継続していきたいし想像する主役はこの企画を見る人達なのだと思っています。

 まずはdrawerを通じて僕たちが各々再認識や発見をすることが重要なことで、上記は二次的なことでもあります。
 なので小金沢くんを含め参加してくれる作家たちと、集まったdrawerから今度はなにができるかを一緒に考えていきたいですね。


第7信|小金沢智→市川裕司
2012/05/30 21:21

 そうですね、僕はリアクション側ではあるけれども、なんでもありをよしとしているわけではないです。自分なりの美意識はあると思っているし、そういう自負もある。だから、このdrawerというかイマジンにしても、多分にして作家とぶつかることはあると思う。でもお互いそれを尊重しているから、こういうやりとりができる。僕はパーソナルを大事にしていると言いながら、一方で、それだけではどうなんだと思うことがある。それは、作品というものを、作家=個を創作の起点として大事に思いながら、そこに他者の視線がどれだけ入っているか、ということも大事にしたいから。個と他をぶつけ合うことでいい作品が生まれてくるんじゃないかと思っている。自分だけの世界なんて、本当に狭いものだと思いますよ。僕にとっては「普遍性」も、「個人の自由」もどちらも一方だけでは嘘くさい。優れた表現は、「個」から出発しながら、「他者」の要素も持ちつつ、それらを超えるところに行き着いていると思う。

 先ほどのメールで「今後」を聞きながらも、なぜ市川さんがイマジンをやろうと思ったか、その発端を僕は聞いてはいたけれど、こういう形で市川さんはしっかり言った方がいいんじゃないかなと思ったんですね。だから、返事が「今後」ではなくて「過去」であったとしても、こうして言葉にしてくれたことを嬉しく思います(笑)。
 若い世代が「日本画」 に対しての関心が薄れているということは、それだけ表現が多様化してきたということなのでしょう。カオスという言葉がふさわしい。でもここで、「日本画科」とかその対としての「洋画科」とか、厳密に言うとよくわからない言葉であるからこそ考えることっていうのは絶対あるはずだと思うんですよ。「日本画」ってなんだ? 「洋画」ってなんだ? そういうわからないからこその「屈折」が、創作にプラスに働くことがあるはずだと僕は思う。僕は日本美術史っていう「歴史」をやりながら、その「歴史」っていうものがよくわからないし、そもそも途中から信用できなくなって、でもだからこそ、まさぐりながら、自分なりのそれを知りたいと考える。そういう渇望の源泉みたいなものが、こういうわけわからない言葉の元にあって、それが自分を先に進ませてくれると思うんです。その可能性を僕は結構信じていて、イマジンが、完全な定義の元にできあがっていないということが、僕は、市川さんと一緒にこれをやろうと考える原因でもあった。最初の市川さんのテキストと今って、根本は同じかもしれないけど、結構違ったから。

 そろそろ、とっかかりの往復書簡としては終わりかなと思います。集まった段階で色々考えていきたいというのは僕もそうで、「日本画」に対する一つのポジティブなきっかけとして、イマジンを見てもらえれば有難いと思っている。ちょっと予定より遅れているけれども、610日くらいには、drawerの第1弾をアップしたいと思っています。現時点で見ているかぎりには、こっちのお題が少々漠然としていたのかなと思いもするけれども、個々でずいぶん解釈の幅があるものが送られてきている。それらは一律小金沢宅に送ってきてもらっているのですが、いずれまとめて展覧会にするとかZINEを作るとか、実際にお見せできる機会があればいいなと思いますね。データにするだけではもったいないものが届いていますよ。


第8信|市川裕司→小金沢智
2012/05/31 23:54

 イマジンを語る上でここまで終始「日本画」になるとは思ってもいなかったです。確かに最初の原稿はもう少し大枠の「日本画」を支点にテーマとしていたし、その後何度か大きく試行錯誤して「drawer」というひとつの具体的活動案が固まった最終原稿ものっけから「日本画」って言ってますからね。これだけ発しながらあまり意識してないのかな()
  そうだね、「個」でありながら「他者」をきちんと受け入れていかなくちゃいけない。drawerもいろんなケースが集まればお互いの「個」が「他者」によって見えてくる。そうすればいい意味で互いの理解にも繋がるのではないかな。まあ人間同士はそう一筋縄でいかないけど、できるだけお互いに懐出し合って、たまにはドンパチやるぐらいがいいかもね。ファインアートなんかはひとりで楽しんでいるように見られがちだけど、社会ではその自己責任をキープするために多くの人達と関わっていかなくちゃならない。決めるのは自分だけど判断するのは他人ですからね。外に出れば、楽しいことより苦労することもたくさんある。そういう現況を分かち合ってイマジンはみんなでつくっていきたいし、なるべく面白いものにしたいですね。
  今、打ち込んでいるのが五月の最終日でdrawerの初回の提出期限でもあります。drawerの起案には、実作品での展示はそれぞれ作品が発揮できる場でやることが望ましいとしており、かわりにウェブ上で公開というのは小金沢くんのアイデアでもありました。僕はまだ拝見していませんが、どうやら期待どおりのようですね。敢えて簡素な投げかけをして想像を引き出す。与えられた枠の中で考えるのではなく、枠そのものも想像しなきゃならない。見えない境界線へ意識を投じることは、特定の目的を捕らえることは難しくなるけども、想像を超えた何かに出会う可能性がうまれる。そういうのも「いいね!」って言える場所でありたいかな。例えば子供が何か見つけたとき必ずそれをもって見せに来たり、袖を引っ張られて連れて行かれたりしますよね。純粋に発見とか感動したことってやっぱり誰かに見てもらいたくて、よしんば共感してもらえたらにっこりしちゃうよね。そんなわけで、せっかくうちの小金沢が感激しているのですから何かお見せできる機会も検討しないといけませんね。
 ハードルも上がったところで、書簡も終了ですね。次回は新たな参加者たちも交えて盛り上げていきましょう!