2011年4月2日土曜日

レビュー|「THE LIBRARY ASHIKAGA」

展覧会名|「THE LIBRARY ASHIKAGA」
会期|2010年4月10日(土)~6月13日(日)
会場|足柄市立美術館

執筆者|宮田 徹也


Fig.1 「THE LIBRARY ASHIKAGA」展示風景 画像提供:足利市美術館


Fig.2 「THE LIBRARY ASHIKAGA」展示風景 画像提供:足利市美術館


Fig.3 「THE LIBRARY ASHIKAGA」展示風景 画像提供:足利市美術館

THE LIBRARY ASHIKAGAは2006年に「THE LIBRARY」として同美術館(4月22日~6月4日)と多摩美術大学美術館(6月10日~7月2日)に行われた展覧会の続編である。今回は静岡アートギャラリー(2009年10月24日~12月20日)と足利市立美術館の展示となり、前回と連続して出品した作家はいない。この展覧会の特徴は「本」という作品を絵画、彫刻、工芸、写真、映像、イラストレーションなど、さまざまなジャンルで活躍する45名が制作した点と、作家の年齢が20代前半から70代まで、活動する地域も国内では宮城から兵庫まで、またドイツ在住の者も含んでいる点である。それにより現代の「作品」の在り方に注目することができる。

出品者を羅列する。
荒木珠奈/飯田啓子/石上和弘/石川雷太/石渡雅子/稲垣立男/乾久子/今井紀彰/上野慶一/内海聖史/内倉ひとみ/勝又豊子/加藤寛子/金子清美/河田政樹/倉重光則/倉本麻弓/来島友幸/黒須信雄/くわたひろよ/小林のりお/清水晃/関野宏子/高石麻代/高久千奈/高島芳幸/高橋理加/多田由美子/田邉晴子/戸泉恵徳/栃木美保/豊嶋康子/中西晴世/原田さやか/菱刈俊作/ピコピコ/前本彰子/松永亨子/三田村光土里/ミツイタカシ/本原玲子/森妙子/山本あまよかしむ/山本耕一/ワタリドリ計画(麻生知子・武内明子)。

手にすることが売りの展覧会ではあるが、石上、石川、勝又、ミツイ、山本の作品はケースに収められている。同じ「作品」であっても、制作する者の立場が異なることが面白い。造型を追及する者がいれば、機能を重視する者もいる。見る「本」と読む「本」に大きく分別することができる。飯田はビスケットを塗りつぶし、アルファベットを連ねることで「本」にした。内倉の「本」は開くと会場の光を乱反射する。倉重は本にドリルで孔を開けただけだがそこにあるコンセプトと記憶が意味深い。高島の「本」は一枚一枚手にとって読むのではなく開いて中身と「対話」することによって意義が生まれる。ワタリドリ計画は葉書を「本」とし、見る者が旅を形成していくのだ。


Fig.4 「THE LIBRARY ASHIKAGA」展示風景 画像提供:足利市美術館


Fig.5 「THE LIBRARY ASHIKAGA」展示風景 画像提供:足利市美術館

作品を「触ること」の喜びは、従来の展示では味わうことが出来ない。しかし「本」を手に取ることは日常であり、翻れば手に取らなければ成立しない。何時の間に「作品」は日常から分離したのだろうか。そう考えると、仏教什器は「作品」ではなく飽くまで宗教用具なのだ。美術は制度によって美術と化す。そのようなことも考えさせてくれる展示であった。

「THE LIBRARY ASHIKAGA」公式サイト
足利市美術館公式サイト

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