2011年4月21日木曜日

レビュー|Dance Perfomance "MAREBITO"

展覧会名|Dance Perfomance "MAREBITO"
会期|2010年5月29日(土)・30日(日)
会場|Living Gallery&Space MAREBITO

執筆者|宮田 徹也


Fig.1 MAEWBITO Duo 撮影:平河綾

当日に配布されたパンフレットによるとこの公演はダンサーが企画したように見えるが、ここでは一つの写真展と解釈する。先ずはパンフレットに記されている四人のプロフィールを引く。

プロフィール
原裕子(Yuko Hara)
18才モダンダンスに出会う。結成当初よりRoussewaltzに参加。内田香、中村恩恵をはじめ国内外多数の公演に出演。2008年初ソロパフォーマンス「frozen time」を発表。以後、独自の感性で作品に切り込み、エネルギッシュかつ存在感のある踊りで空間を満たす。今回、DanceSangaで出会った二人の世界が…Costume、Photoとともマレビトの空間に広がってゆく。

江角由加 (Yuka Esumi)
6才からクラシックバレエを始める。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、同期により結成されたShoppin'gocartメンバーとして活動。07年より中村恩恵に師事、DanceSanga研修生。その一方、笠井叡・笠井瑞丈・上村なおか作品や、宮下恵美子仮想ダンスカンパニー・アトリエムメンバー、ホナガヨウコ企画メンバー 等として、様々な振付家作品にダンサーとして参加。6月には、アコーディオン奏者のcoba×「カンパニーデラシネラ」の小野寺修二、コラボレーション公演に出演。型にはまらない独自の表現方法を大切にしながら、ソロ作品や即興にも意欲的に取り組んでいる。

平沢みゆき (Miyuki Hirasawa)
長野県生まれ 【SOCIAL ACTIVITY】2008年8月 日暮里 HIGURE17-15cas。ソラキカク企画「サイボウダンス」衣装担当。2008年10月 女子美術大学女子美祭ソラキカク企画「サイボウダンス」衣装担当。

平河綾(Aya Hirakawa)
趣味で気ままに写真を撮る。『カメラピープルみんなのまち』2枚入選。『女子カメラ』Vol.12,14写真掲載。『カメラつれてこ』Vol.2,3冊子に写真掲載。CP+2010カメラつれてこ写真展 2枚写真採用。他。
http://fotologue.jp/#colors-in-my-heart

ダンス、衣装、写真が関わっている。会場は古びたマンションの一角であり、鍵、瓶、小物入れといった古道具が並び、自然光を取り入れながらも温かい光のライトがオブジェを照らしている。これは会場の「MAREBITO」が販売しているものである。ルー・リードの落ち着いた曲が流れる。江角が無表情で無音の中、立ち尽くす。グレン・グールドの《ゴールドベルク組曲》が流れ、原は壁に凭れて座り、ゆっくりと立ち、椅子に座る。再び立ち上がり、滅びるように頭を抱え、ふと振り向いて壁に貼られたDMの一枚を剥がし、手に持ち、会場を後にする。フラッシュとシャッター音が三回焚かれては響き渡り、カメラによる場面の変更が演出される。原は背を向け、右手のみを伸ばして肩を震わせ、爪先で歩み椅子に座る。指先を頬や他方の手に這わせ、緩急をつけた手足の動きを織り交ぜつつ、膝を抱えて沈黙する。床で大きく展開し、蝉の声が断片的に聞こえたかと思うと退場する。二人が舞台に上がると、柔らかい電子音が響き渡る。椅子に座る、思わず立ち止まるなど個々の物語を静謐に身体で語り、モチーフである手の動きが一度だけ同調したかと思うと離別していく。原が僅かに震えると公演は終了する。各15分、Duo5分程であった。


Fig.2 MAEWBITO 江角由加 撮影:平河綾


Fig.3 MAREBITO 原裕子 撮影:平河綾

光、音、雰囲気が回顧、追憶といった記憶を擽る。二人の透徹した皮膚感は平沢による柔らかい衣装が生み出した。最も印象的であったのは、平河が写したDMのイメージから二人が零れ落ちたことである。椅子に座る二人、壁際に佇む二人の姿を納めた写真の雰囲気が、そのままパフォーマンスとして実現したように錯覚する。それは「我が国の古代には、人間の来客の来ることを知らず、唯、神としてのまれびとの来る事のみを知っていた」(折口信夫「国文学の発生(第三稿)」1929年)ことと同様に、DMが総てを予知していたのであった。


Fig.4 Dance Perfomance "MAREBITO" DM(表)


Fig.5 Dance Perfomance "MAREBITO" DM(裏)

このようなDMの機能は、ダンスでは稀有な事例である。【MAREBITO】に再会したい思いと同時に、平河の写真展にも期待が高まる。

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